「この前言ってた約束って、それか?」 「……うん」 右手の薬指を撫でて、あたしはため息をついた。 目印のない、ただの指。 指輪がなきゃ……王子様に気付いてもらえないのに。 口を結ぶと、あたしの中で、もやもやとしたイヤな思いが湧き上がってきた。 ――ひょっとしたら、 あの指輪を無くしたから……、こんな目にあったのかもしれない。 王子様とのたったひとつのキズナを無くしたから……だから…… そんな考えが、ゆっくり、静かに、胸に空いた穴を埋めるように広がっていく。