「ちゃんと、今を生きろ」 郁己くんは、黙り込んだあたしの目をじっと見て言った。 ――こころの奥では、分かってる。 郁己くんの言うとおり、王子様に会えたからって、あたしの人生が劇的に変わるような保障はどこにもないってこと。 そもそも、本当に会えるのかさえ……不確かだってことも。 「だけど……迎えに来てくれるって言ったんだもん」 涙をぬぐったあたしは、小さくつぶやいた。 「必ず見つけ出してあげるからって……」