「さっきはごめんねー、郁己、爆睡しちゃっててさ」
「……いえ」
「ホントはなにか用があったんでしょ?」
「……」
郁己くんの服を着ていた彼女の姿を思い出したあたしは、口をつぐんだ。
何となく会いたかったからとか、借りてたTシャツを返しにきたなんて……本命の彼女の前で言えるわけがない。
「あたし……、ここに引っ越してきたばかりで。ゴミの日とかまだ覚えきってなかったから聞こうかと思って。でも、他の部屋の人に聞いたから……もう大丈夫です」
「そなの?」
「はい……」
チラリと見上げた郁己くんは、彼女でもあたしでもなく、王子様をじっと見ていた。

