「もう夜かぁ……。疲れた……」 階段をよろよろと上ったあたしの足は、突き当たりに着く前に止まった。 手前の部屋のドア。その前で。 ……ズルイな、って思った。 迷惑とか言いながら、こんな時だけ何かをしてもらおうとしている自分が。 郁己くんなら…… この落ちた気持ちをどうにかしてくれるんじゃないか、なんて、心のどこかで思ってる。 いつもの軽さで冗談を言って、そして……優しくしてくれるんじゃないかって。