――すー……すー…… 返事の代わりにあたしの前髪を揺らしているのは、静かな寝息。 「うそ……寝ちゃったの?」 じゃあ、この隙に。……って思ったのに、あたしは動けなかった。 だって、こっそり見上げた寝顔が、あまりにも気持ちよさそうで。 「ズルイ……なぁ……」 あたしのせいで寝れなかったなんて。 そんなの、男の子の郁己くんが悪いだけなのに。