好きになってもいいですか?

あの、容姿端麗で、クラスの人気者で、誰にでも優しくて......。

《まぁ、顔立ちがあれだけ整ってて綺麗なんだもん。似合ってて当然だよね?》

上杉くんが去ってから、私はもう一冊同じマンガの本を手に取って会計を済ませ、言われた通りに外で彼を待つ。

今日発売の少女マンガ。

忘れるところだったが、初めは彼もこのマンガに手を伸ばしていたのだ。買おうとしていたのだろう。

《誰かに頼まれたのかな? でも、何で女装? ......趣味?》

一人になると、どうしても疑問ばかりが浮かんできてしまっていた。

どれくらいそうしていただろう。不意に肩をトントンと叩かれた。振り向くと、メイクを落としてウィッグを取り、ニットではなく厚手のシャツを着た上杉くんが立っている。

そう言えば初めてだ。

上杉くんの私服姿を見るのは......。

ドキッと胸の鼓動が高鳴ってしまう。

《ふわぁ~、上杉くんがこんな近くに......》

不自然にならないよう、ゆっくりと視線を外す。


「驚かせちゃってごめんね。とりあえず、喫茶店にでも行こうか」

「は、はい!」

「ははっ、戸惑ってるのは分かってるけど俺達同い年なんだし、普通に話して良いよ」

「はい......あ、う、うん......」


これは一体どういう事なのだろうか。

入学してから挨拶しかしたことの無い上杉くんと休日に偶然会い、隣を歩いて会話をしている。