好きになってもいいですか?

《何で私の名字を知ってるんだろう?》

首を傾げて見上げていると、その人は困ったような笑みを浮かべながら口を開く。


「俺だよ。同じクラスの上杉拓真」

「......」


小声だけど聞き取れた......多分。

聞き間違いでなければ、彼は今、上杉拓真と名乗っただろうか。

《上杉、拓真、くん......?》

同じクラスの上杉拓真は一人しか知らない。

《嘘っ!?》

あまりの衝撃に思わず口がぽかんと開いてしまう。

固まってしまった私をどう思ったのか、上杉くんが取ろうとしていたマンガを取って渡してくれた。


「......芹沢さん、この後時間ある?」

「......はい......」


半分呆然としながら頷く。


「それじゃあ、マンガ買ったら外で待ってて。この格好、何とかして来るから」

「......はい......」


頷いたは良いが、まだ状況が呑み込めない。

目の前にいる人物は本当にあの上杉くんなのだろうか。