それでも君に触れたくて。


どういうこと?





全然理解できない。







私は桜庭くんっていう幽霊(?)を観察する。









艶のあるさらさらの黒髪。



白い肌。




綺麗な二重の瞳にスっと通った鼻筋。







…イケメンじゃん。






…ってそうじゃなくてっ!







「あのっ…いったいどこから入ってきたんですか?」





「壁通り抜けた。」






「なんでそんなことできるの!?」








「幽霊だから。」








「…本当はどこから入ってきたんですか?」








「だから壁だって。」








…いやいや、その幽霊設定もうやめません?





「はいはい、もういいです。」









私が若干呆れて適当に返事して警察に電話しようかと考えていると、桜庭くんがじとっとした目で見てきた。







「信じてないよね?」








「はい。」





だって普通、「私は幽霊です」なんて言われても信じられないし。







桜庭くんははぁ…とため息をつくと私に向かって手を出した。







「触ってみて。」








「知らない人の手は触っちゃだめって教えられてきたんで。」







「…。」







無言で私を見続ける目が怖くて私は恐る恐る手を近づけた。








そして私の手はちゃんと体温のある人間の手の上にのった。








…ということはなく、まるであったかい空気の中に手をくぐらせたような感じで通り抜けた。