それでも君に触れたくて。


別にいじめられているわけでもないし、要件があるときは私から話しかければ答えてくれる。








でもそれ以外では私はいないものとされた。







なにかきっかけがあってこうなったわけでもない。







最初は話すくらいの友達だっていた。…でも、私があまり喋らなかったからつまらなく思ったのだろう、すぐに別のグループの子と行動をともにするようになった。









自分の席につきながらふと考える。







…さっき桜庭くんに「学校では話しかけないで」って言ったけど、誰も私のことを気にとめないなら話しても別に大丈夫だよね。









そう思って桜庭くんの方に顔を向けると、彼はいなかった。









教室の入口のほうに目を走らせると、桜庭くんの黒髪がふわっと廊下に消えていくのが見えた。








…どこ行くんだろう。








桜庭くんはここに来るのは初めてのはずだ。校舎の中で迷ってしまうかもしれない。








私は桜庭くんの後を追った。