不意に、ジャケットの襟が思いっきり引っ張られたと思ったら、灯里の唇が俺の唇に重なった。
身長差があるから、俺が屈まない限り、
背伸びをしても届かない。
高校3年生頃から、身長差がグンと開いたから。
灯里が襟にしがみ付くように背伸びしてキスをしてきた。

驚いて、唇を離した俺は、灯里のウエストを持ち上げる形になっていた。

「な、なんで…」

「お礼だよ。送ってもらった…」

角度的にどうしても上目遣いになる灯里。
暗闇でもわかるくらい、頬を赤らめている。
か、可愛い‼︎
めちゃくちゃ可愛い‼︎
と思うのに…
その理由になぜかムッとしてしまった。

俺達の間には、いつまでも“お礼”や“口止め料”
なんて言い訳が必要なのか?

我ながら、勝手だと思う。
でもその時の俺は、突発的なことに、少し驚いて、嬉しかった反面、苛立ちが募った。

灯里の言葉通り、ギブアンドテイクの仲なら、
ガッツリいただくまでだ、と思ってしまった。

「足りない。
今のは健心の分だな。
灯里の分はこっちからいただく。」

そう言って、俺は灯里の唇を思う存分貪った。

「あ、あき……ん…」

灯里が離れようとして、俺の腕の中で身を捩っても、そんな仕草は俺を煽るだけ。

好きだ。
離れないでくれ。
ヘタレな俺だけど、受けとめてほしい。

思いを込めた口づけは、満足するまで、離れることはなかった。

俺、やっぱりもう限界だ……