ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語

灯里の生活の中心が健心だということはわかっている。
だから、商社で語学力を活かしてバリバリ働くという選択肢がないことも頷ける。

「灯里、今更だけど、灯里がやりたいことがあるなら、やってみたらどうだ?」

「え?なに?やりたいことって……」

「院長秘書じゃないだろ?
少なくとも、大学で考えてた将来に
今の職は入ってないはずだ。」

「なに言ってるの⁉︎
散々お世話になってて、そんなことできないわよ。前にも言ったけど、本当に感謝してるのよ?
拾ってもらって。」

「だけど!
やりたかったことじゃないはずだ。
灯里の能力が全く活かせてない。」

「………彬良、私が病院にいない方がいい?」

…へ?な、なに言ってるんだ⁉︎

「め、目障りかな……?」

「は?なに言ってるんだ?
そんなわけあるはずないだろ⁉︎
俺は、灯里のためを思って………」

「で、でも…彬良が廣澤に帰ってきて、すぐに
院長秘書辞めたらって言われたら…」

やばい。灯里の目が潤み出してる!



『ただいま〜』


げっ!
こんな時におばさんが帰ってきた。
ま、まずいっ!

「あ、灯里!とりあえず落ち着けよ。
誤解だからな!」

タイミングが悪すぎるだろ〜

「あ、お邪魔してます!」

「あら?彬良くん!
いらっしゃい。お久しぶりね〜。」

「あ、はい。
ご無沙汰してしまって…
あ、この4月から廣澤の内科に入りました。」