ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語

俺は同期として参列。

彼らの母校の大聖堂で執り行われた
結婚式には、大学の同期の他、幼稚園から高校までの同級生や恩師が、大勢祝いに駆けつけた。

荘厳なパイプオルガンの音に彩られ、花嫁と花嫁の父がゆっくりバージンロードを歩く。

俺も2人の軌跡を見てきた1人だ。

神父の前で父親から花嫁が新郎に引き渡された時は、2人の深く長い歴史と愛情に圧倒され、不覚にも目頭が熱くなった。

真摯に仕事に向き合って3年目。
いくつもの命を助ける手伝いをしてきた。
研修医時代も女性とまともな交際をせず、仕事第一の生活を送ってきた。

しかし、俺はその時初めて、1人の人間を信頼し、愛し、敬うという結婚をした藤田に尊敬の念を抱いた。


◇ ◇


新年度を迎え、各医局に研修医が入ってきた。

仕事上、かなり接点のある小児科に、モデル並みの容姿で、頭も切れる女医が入った。
それが稲森麗、後に妻となる麗との出会いだった。

夏にもならない頃には、麗の視線がどこへ向いているのかは、誰が見ても明らかだった。
報われない恋、いや許されない恋か。
麗の目は同じ小児科の先輩医師、藤田を追っていた。

アイツだけはやめとけ。
何があっても、どう転んでも、君の想いが届くことはないから。
早く気づいた方が良い。

何度声をかけようと思ったか…。