言葉が足りなくてすれ違っていたことを反省したのか、思ったことをポンポン口に出すのだけど。
……恥ずかしくって、やめてほしい。

「……もう!
ずっとこんなんじゃ、お祝い出来ないじゃない!
ほら、出来たから食べるよ?」

ここで“待て”をしておかないと全ての計画が無駄になる。

私だってイチャイチャするのが嫌いではないの。
むしろ好き。
でも、段取りってものがあるのよ。
そこは合わせてもらわないと。

一緒に住み出して彬良は色々な顔を見せるようになった。
甘えた顔、拗ねた顔、余裕なさげに私を見下ろす顔。
その全てが私だけのもの。
誰にも見せたことのない、私だけの顔なの。
それが嬉しい。愛おしい。
自分がこんなに独占欲の強い人間だと思わなかった。

「フフフ…彬良、だーい好き!」

「灯里! やっぱり先にベッド…」

「それはダメ。
……髪は洗ってあげるから。
食べるよ。」

あーあ、パタパタ振ってる尻尾が見えるよ。

結局、私も甘いんだ。
新婚なんだもの。
いいよね?

それに今日は誕生日なんだもん。

「はい。彬良、お誕生日おめでとう!」

「ありがとう。」

キリッとよく冷えた白ワインで乾杯だ。