そうこうしているうちに、ぽつり。


薄暗い講堂内で一筋のスポットライトが壇上に落ち、そんな状況で登場する男といえば1人しかいない。


コツ、コツ、コツ


お決まりの革靴を鳴らしながら、堂々が現れた。


ストライプのスーツに包まれたその体躯は、心なしか少し小さくなったようにも見える。


だが。


「卒業式第4幕を始めます」


腹の底から発せられた声は、私たちを緊張の渦に飲み込むには十分だった。


寒いわけでもないのに身震いがし、思わず明日菜とみゆきの顔を見上げてしまう。