あ、100ページ目。

ようやく波乱万丈な2章を読み終えた。


おもしろかった。3章で謎がわかるのかな。また謎が増えるのかな。



……そういえば、野球のかけ声が聞こえない。



いつの間にか空が暗くなっていた。


星がまたたいてる。



「えっ、うそ」



あわてて時計を確認すれば、下校時間を過ぎてる。

うわあ、もうこんな時間。


司書の先生はわたしを信用して図書室を任せてくれているからこういうことはままあるけど……。

これは最高記録。



あの金髪の彼もきっともう帰って────


「んん……」


────なかった。



見開きのページに頬をくっつけて眠っていた。


静かに近寄ってみる。



くるんくるんとした細い髪。ムラのない金色が鮮やか。

かわいい寝顔。犬みたい。


……ってずっと盗み見てちゃいけない。



「あ、あのお……」



軽く体をゆすると、ぐずったようにうなられた。

本当に犬っぽい。


下敷きになった本を覗いてみる。



────ロミオとジュリエット。



ずいぶんロマンチックなお話を読んでるんだなあ。


横に積まれてる分厚い本たちは、最近のから昔、平安のものから外国のものまである。


ちょっとチャラけた印象があったけど偏見だったかな。



「……ふへ」



間の抜けた息が耳にかかった。


ロミオとジュリエットから金髪に向けると
金色ではなく焦げ茶色が留まった。


ぱちくりと大きな瞳がまばたいてる。