《拓》
「喜菜、今日家にお袋さんいる?」

「えーっと、土曜日だからぁ…いない…かな?」

よし、喜菜ん家に行こう。

…いや、だめだ!

我慢できる気がしない。

「そっか、んじゃ、俺ん家行こ」

「え? 良いけど」

家には遥(はる)がいるはずだ。

遥は、俺の妹で、喜菜もよく知っている。

遥がいるなら、大丈夫だろう。

ただ、遥は別の意味で危険だ。

うるさいし、やたら喜菜に懐くし、鬱陶しいし、声でかいし。

まぁ、そこは我慢するしかねぇか。