《拓》
…最近、妙に喜菜の人気が高まってる。

「小田原さーん、お弁当食べよ。」

「帰り、駅まで一緒に行かない?」

男子からの人気というよりは、女子からの人気。

まぁ、男子からの人気はもとからあるんだけど。

いやでも、女子同士の会話が耳に入る。

…喜菜は、俺のものなのに。

…って、女子に嫉妬してどうすんだ?

重症だな。

桃山だけでも嫉妬してるのに。

「…拓? …顔怖っ。大丈夫かよ」

「……」

藤岡が話しかけてくれるが完全無視。

てゆうか、この顔で大丈夫に見えるのかよ。

「おぉい、どうしたんだよ? あ、喜菜ちゃんか?」

「……」

さすが、よく分かってんじゃねぇか、と思いながらも、何も言わない。

「おーい、あっ、わかった! 拓もしかして、女子に嫉妬してんの? 最近喜菜ちゃん、いっつも女子といるもんなぁ。」

「そうなんだよ。北野と仲良くなり出してからなんだけどさ。」

「おっ、やっと喋った。お前なんで喋んなかったんだよぉ。おもしろすぎだから。女子に嫉妬とか。」

わかってる。

わかってるけど、喜菜をとられた気分なんだよ。

これも彼氏の試練なのかな。

耐えるしかねぇのかよ。

「た~く!」

「うわ、びびった~! 脅かすなよ、喜菜。」

「ふふっ、さっきから何難しい顔してるの?」

「喜菜には死んでも教えねぇーよ」

恥ずかしすぎんだろ、女子に嫉妬とか。

「え~、私に隠し事~?」

「喜菜ちゃん、拓も色々悩んでるんだよ。そっとしといてあげて。」