《拓》
チッ…。

なんで、男と楽しそうに話してんだよ。

まわりには、男女問わず人がよってくるが、正直、喜菜以外に、喋りかけられてもあまり嬉しくない。

「ねぇ~、森本くん。連絡先交換してよ」

「えっ、ずるいよっ。うちも教えて~」

…鬱陶しい。

無視していると、周囲の男子たちが、さわぎはじめた。

「てか、あそこにいる女子めっちゃかわいくね?」

「うわ、マジかわいい」

「彼氏、いんのかなぁ?」

おい、あいつらが、かわいいって言ってんの喜菜じゃねえか?

…やっぱそうか。

あいつ、モテすぎなんだよ。

俺が追い払うのにどれだけ苦労しているか。

「おい、おめぇら。小田原だけは絶対にやめろ。」

こうして、小学校高学年ぐらいから、喜菜に近づこうとする男を追い払っている。

「なになに~、森本、小田原さんの彼氏なの?」

「うわぁ、森本が相手じゃ、奪えねぇじゃん」

「…別に?彼氏じゃないけど。」

「なのに、なんで小田原さんに近づいたらダメなんだよ~」

「そうだよ!森本は、小田原さんの彼氏でもないのに!」

そんなの決まってんだろ。

俺が喜菜を好きだから。

誰かまわりのやつ気づいて言ってやれよ。

「お前バカなのか?そんなの森本が小田原さんを好きだからに決まってんだろ」

おぉ、今しゃべったやつ、ものわかりがいい。

藤岡って、言ってたかな、こいつ。