…教室にはついたけど、誰と話そう。

拓は、さっそく友達ができたみたいで、仲良く数人としゃべっている。

「ねぇねぇ、名前何て言うの?」

キョロキョロとまわりを見ていたら、話しかけられた。

「私は、小田原喜菜だよ。」

「喜菜ちゃんって言うのか~、かわいい名前だね!私は、桃山ここみだよ。」

なんだか、気が合いそう!

嬉しいな。

「よろしくね~。私のことは、喜菜って呼んで」

「こちらこそよろしくね~。私のこと、ここみって呼んでね!」

「うんっ!」

そんな会話をしていたら、突然話しかけられた。

「おっ、ここみ、もう友だちできたのか。え、めっちゃ可愛いじゃん。」

そう言っていたので、ここみの知り合いなのだろう。

誰かな、男の子だけど。

「うん、今日知り合ったんだけど。小田原喜菜ちゃんって言うの。喜菜、こいつは私の幼馴染みの、寺山悠気」

「こらっ、ここみ。こいつってなんだよ。ごめんね小田原さん、ここみのやつ、口悪くってさ。」

「全然そんなことないよ~。ここみちゃん、優しいし!」

ここみちゃんの口が悪いって思うのも、きっと幼馴染みだからだよね。

私にも拓がいるから、よくわかる。

仲良い証拠だよね!

「ねぇ、喜菜には、幼馴染みいないの?」

「それ、俺も気になる!」

寺山くんも、会話に参加して、話が弾む。

「幼馴染みねぇ…。いやぁ、厄介者がいるんだよね…。見える?あそこで、囲まれてる、あいつ。」

「あっ、同じクラスなんだ。すごいね。」

8クラスもあるなかで、同じクラスだからか、ここみが驚きの声をあげている。

「てか、めっちゃ囲まれてるね。人気者だなぁ。」

たしかに。

昔から、拓は人気者。

私からしたら、拓がどうして人気者なのか意味がわからないんだけど。

「うん、森本拓っていうの。まあ、でもうるさいし、いつもめんどくさいんだけどね」

そう私が言ったとき、ふと、拓がこちらを見た。

なんか、私たち見てにらんでなかった?

会話、聞こえてたかな?

めんどくさい幼馴染みとか言っちゃったし。

「なんか、俺のことめっちゃにらんでる?森本くん。」

やっぱり、寺山くんもそう思うんだ。

「あぁ~、なるほどね。喜菜、愛されてるねぇ。」

ここみちゃんがつぶやいたけど、何を納得したのか、全然わからない。

「ねぇ、何かわかったの?」

「え?自覚してないの? まぁ、そのうち喜菜にもわかるよ。」