「大人チケット二枚ください。」

そっか、高校生は大人料金なんだ。

って、そうじゃなくて拓に払わせたらダメじゃん!

「ほれ、喜菜のチケット。」

「いくらだった?それくらい払えるし。」

拓に申し訳ない。

それに、後からゴチャゴチャ言われたくない。

「デートん時ぐらい、男に甘えとけば」

キュン…

拓も男なんだよね。

それに彼氏。

「ありがとっ。」

拓の優しさをありがたく受けとることにした。

「拓っ、見て!クラゲがいる~」

「そうだな。」

「きれいだね。」

「お前には負けるけどな。」

! 恥ずかしい…

私、たぶん今顔が真っ赤だ。

「も、もうっ拓!」

「照れてるな、喜菜」

「そうだけどっ。拓だって顔赤いじゃない!」

「バーカ、照明のせいだよ。」

ウソだ!

絶対照れてる!

「ま、せっかく来たし、今は水族館を楽しもうぜ」

「うん。」

実は奥の方に見えている、小さい魚が気になってたんだよね。

「あの魚何かな?」

「熱帯魚じゃね。ほら、グッピーって書いてある。」

きれい、と言おうとしたけどさっきの出来事を思いだし、ぐっと口をつぐむ。

「いっぱいいるね。」

「ちっこいからな、一匹一匹が」

「確かに。」

ちっちゃいところもかわいいんだけどね。

「喜菜、こっちのコーナー魚にふれあえるって書いてんぞ」

「えっ、ホントッ?」

「こんなこと、ウソついてどうしろってんだよ」

「そういう意味で言ったんじゃないってば!」

もうっ!

「普通に水の中に手をいれて、さわっていいんだよね?」

「たぶん。」

あっ、ナマコだ!

みんなは、黒くて気持ち悪いって言うけど、ナマコかわいいと思う。

「ヒトデだ…」

独り言のように呟いたら

「そっちのヒトデ、珍しい色じゃね?」

と拓が言う。

「ホントだね。」

オレンジとかが多いヒトデだけど、あのヒトデはピンクっぽい感じ。

なんか、ふわふわした色味でかわいい。