《拓》
…ちょっと早く着きすぎたか。

待ち合わせの時間より15分も早い。

昨日は、なかなか寝れなかった。

…あれ?あそこにいるの喜菜だよな?

早すぎねぇ?

まだ10分以上あるのに。

「おーい、喜菜」

喜菜を呼ぶ。

「え、拓?もう、来てたの?待たせてごめんね」

「あぁ、待ちくたびれた。」

「えっ。ごめんね、ほんと。」

「冗談だって。来たばっかだから。ほら、そんな泣きそうな顔すんな。」

「だって~。拓のいじわる。」

すねてる喜菜もかわいい。

「へいへい、俺は、意地悪ですよ~。ほら、さっさと駅行くぞ」

電車で20分ぐらいでつくはずだ。

「うん、わかった。」

電車に乗ってみると休日だからか、満員だった。

「うわっ、混んでるね~」

「あぁ、これは、なかなかだな」

「わっ、痛っ」

喜菜が人の波にのまれて、よろけたみたいだ。

「おいっ、大丈夫かよ、喜菜。」

とっさに喜菜を支える。

「う、うん、大丈夫。」

「俺に捕まってろよ」

そう自分で言ったものの、人が多すぎて体が密着しまう。

なんか恥ずかしっ、と思ってたら喜菜なんて顔が真っ赤だ。

ま、そこもかわいいんだけど、なんて喜菜には絶対言えない。

「ねぇ、そろそろ着くかな?なんか、周りの人に見られてる気がするんだけど。」

確かに。

あそこの二人カップルなのかな、なんて思われてんのかな。

「えっと、あと二駅だな。」

「そっか、しばらくの我慢だね。」

「そうだな。」



○×駅~、○×駅でございまーす、お降りの際は列車とホームの隙間にご注意ください

「お、ついたぞ」

「やっと出れるね」

「ん、早く行こ。」