《喜菜》
「おぉ~、遂に付き合ったか~。森本くん頑張ったねー。」

ここみに、昨日のことを報告している。

「えっ、ここみ、拓の気持ち知ってたの?」

「当ったり前でしょ。あんなにわかりやすい態度だし。」

「えっ…。小田原さん、森本と付き合うことになったの?」

「あっ…。悠気」

寺山くん…。

「うん、そうなの。」

「悠気、残念だったね。まぁ喜菜のこと、森本くんなら大事にしてくれると思うよ?」

ここみが寺山くんに寄り添うように言う。

「あぁ、そうだよな。でも、やっぱつらいな、失恋って。勝手に話に割り込んできといて悪いけど、これ以上聞くと、俺の心が持たないから、俺は、離れるな。」

「あっ…、うん。」

なんだか、ぎこちない雰囲気だったな。

「なんか、気まずかったよね。ごめんね」

「いやいや、ここみが謝ることじゃないでしょっ。大丈夫だから。気にしないで」

ならいいけど、とここみは言った。

あっ…そういえば…

「そういえば、ここみは、好きな人いないの?」

今まで聞いたことなかったんだよね。

ここみの恋バナ。

「私はね、恋愛より友情なの。彼氏ができて喜菜としゃべらなくなるより、彼氏を作らない方がいいと思ってるから。」

「そうなんだ。ごめんね、そう考えてるのに惚気を聞かせて。」

ほんと、申し訳ない。

「ううん、喜菜が幸せなら。」

「ううっ、ここみ~」

「ちょっと喜菜。そんな抱きつかないで、みんな見てるよ。」

思わず抱きついたら、軽く拒否される。

どうしよう、こういうスキンシップは嫌いなのかな…?

「ごめんね、ここみ」

「いや、別に喜菜が嫌とかじゃないから」

よかった…。

やっぱり、ここみのこと大好きだ!