《喜菜》
「おはよー、喜菜」

朝から、ここみが話しかけてくれる。

「おはよ、ここみ。」

そう言いながら、スクールバックを机の横にひっかける。

「ねぇ、ここみ」

後ろの席のここみに話しかけてみる。

「ん、何?」

「…私って、拓のこと好きなのかな。」

「えぇえええ!気付いてなかったの? というか、自覚してなかった?」

ちょ…!声おっきいよ!

「し、静かに!」

口に人指し指をあて、静かに、のポーズをとる。

「ちょ、気付いてなかったの?」

今度は、ヒソヒソ声で、ここみが聞いてきた。

「気付くっていうか、好きなのかなぁ、みたいな感じ。一昨日、寺山くんに告白されて、ふと思い付いたというか」

「えぇぇえ!初耳なんだけど!悠気、告ったんだ~。で、断ったの?」

「うん」

だって、寺山くんのこと恋愛対象として、見てなかったから。

「まぁ、喜菜のこと大事に思ってくれる、身近な人いるでしょ?」

「え?誰のこと?」

身近な人?

「はぁぁ、気付いてないか。まぁ、私は、喜菜のこと応援してるから、森本くんへの気持ちも、もう少し考えてみたら?」

わかった、ありがとって言おうとしたら、先生が、教室に入ってきたので、仕方なく前を向いた。