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私達の周りには、何もなくなった。
私と(げつ)だけ別空間に切り取られたみたいに、優しい光に包まれている。

ここは、二人だけの世界ーー。

やっと辿り着けた、誰にも邪魔されない、私と(げつ)の場所。


「……夢が、叶ったね?」

ポツリと呟いたその言葉に、返事はない。
すっかり冷え切った(げつ)の身体。

身体はここにあるのに、いない。
(げつ)は、もう、いないーー。


『ずっと俺の傍で、微笑っていて下さい』

ーーダメ、微笑えない。
もう、絶対に笑顔になれない。

「っ……たす、けて」

これが最後でいい。
この願いが叶うなら、もう満月の能力(ちから)なんていらない。

引っ込み思案で、ドジで、泣き虫でいい。
特別な力なんていらないから……。

「っ……(げつ)を、ッ……助けてッ!!」

愛おしい人の亡骸をギュッと抱き締めながら、空を見上げた。

……でも、そこに満月はない。
もう、何も、私にはない。