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「わぁ~!見て、(げつ)!綺麗だね~」

港町の砂浜を散歩しながら、私は夜空に浮かぶ満月を見上げた。
私達の里があった森から見上げる満月も良かったが、海の上に浮かんでいるような砂浜から見上げる満月もまた良い。

ーーいや。
それはきっと、好きな人と一緒に見上げているからに違いなかった。

いつだって、傍に居てくれた。
満月に祈る夜も、いつも傍で見守ってくれていた。

だから、今夜は、貴方が主役ーー。

「さっ、(げつ)。約束通り、貴方の願いを教えて?」

「……本当に、何でもいいの?」

首を少し傾けて、目を細めて、意地悪そうな笑顔で尋ねてくる彼。
私は「もちろん!」と笑顔で頷いた。

私はきっと、彼の願いなら、何でもよかった。
お金でも、力でも、彼が望むならどんな悪事にも手を貸していただろう。


ーーでも。
(げつ)は目の前で片膝を着いて、そっと私の左手を取ると、見上げながら言った。