「……お、やっぱいいな。(おう)にはそっちのが良く似合う」

「あ、ありがとう」

森の茂みでドレスから里で着ていた動きやすい薄手の桃色の着物に着替えた私を見て、(げつ)が微笑う。薄暗い夜の闇の中、焚き火に照らされたその表情に胸がキュンッと締め付けられた。

幸せーー。
もう二度と訪れないと思っていた(げつ)との時間。この奇跡に、私は心から感謝した。

「ほら、こっち来て座れよ」

「う、うんっ」

座って居る隣をポンポンッと叩かれ、私はゆっくりと彼の隣に腰を降ろした。
(げつ)もさっきまで変装に使っていた鎧を脱いで、里で着ていた前合わせの紺色の上着に白地のズボン。懐かしい姿にホッとするような、しかし、空いた襟の隙間から見える彼の逞しい胸板にドキドキする。

さっき私を軽々と抱き上げた、あの力強い腕。鎧越しではわからなかったが、今抱き締められたらどんな感じなのだろうか?
そんな事を考えて、ほんのり赤くなる頬を焚き火のせいにして……。私は暫し、幸せに浸った。