ねぇねぇ、弥くん。


皆が部活に行ったり帰ったりするなかで、私は今朝も行った、西校舎の四階の空き教室にダッシュで向かう。




放課後にも関わらず、空き教室の周辺に人通りがないのは「西校舎の四階には”アレ”がでる」っていう噂が流れてるから。




そしてその噂を流したのは他の誰でもない、弥くんであることは最近知った。




どこか一人でゆっくりできる場所を作りたくてながしたんだとか。




…ほんと、そういうとこちゃっかりしてるよなぁ。




「あーっ、また寝てる。…もう、弥くんっ、起きてよっ。」




「んん…あ、あんたか。」




ゆっくりと目を開けてボーっと私を眠たげな眼で見つめる。




弥くんはよっこらせって体を起こすと、「んー」と伸びをした。




「で、何?なんか用?」




「弥くんに会いに来たっ」




「ふーん、じゃあもういい?俺一人の時間が欲しいんだけど。」




そう言って冷たくあしらわれるのは日常茶飯事だ。




そして、そう言ったっておとなしく私が帰らないのもまた日常。




いつまでたっても動こうとしない私を見て、はぁ…とため息をつき、




「うるさくすんなよ。」




とだけ言って弥くんはまた横になって眠り始めた。