幸野さんは看護師の仕事に行ってしまった。私も早くお茶を配らないと。朝ご飯を配る前に看護師さんが処置で使う鑷子(せっし)の数を数えなくちゃ……。

そう思って動き出すけど、幸野さんの顔が忘れられない。ヤダ、どうしよう……。

「一人前になるまで恋はしないって思ってたのに……!」

動き始めたこの心はもう止まることを知らない。だって、幸野さんに甘く情熱的に迫られているから。



お茶を配り終わった後、鑷子の数を急いで数えてご飯を配る。それが終わったら食事介助。

「花見さん、これ飲ませてあげてね」

幸野さんから薬を渡される。私が「はい!」と言うと幸野さんの頰はまた赤くなっていた。今まではうまく周りに誤魔化せていたのに、今日は赤い頰が目立っている。周りの看護師さんが「熱があるんじゃ……」と言うほど。

幸野さんと一緒の時間帯に仕事をするの何久しぶりからか、ナースステーションで互いに仕事をしている時はチラチラとお互いに見つめ合ってしまう。今も視線を感じているから。