冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


予想の数倍、微笑ましい返事だ。

左手に視線を落とすと、薬指に指輪の存在がわかる。注視しないと気付かないが、黒手袋の下に忍ばせているらしい。

仕事中も外さないなんて、なんだか意外。

本心をはっきり口にするし飄々としていて怖いイメージだったけど、思ったよりも愛情深くて誠実な人なのかも。

身内を標的にしないならば、腕利きの情報屋といえど、レウル様の出生については知らないのか?ダルトンさんに“レウルの犬”と呼ばれるほどなら、きっと疑いもしていないのだろう。


「それにしても、よくあの陛下を落とせましたね?」

「あ、いえ。そういうわけではないんです。私を好きなのかと聞いたら、“世間の好きの定義を当てはめられても困る”って言われましたし」

「言いそうだなぁ、あの人」


よく考えてみれば、恋人ならまだしも結婚相手をこんな簡単に決めて良いのだろうか?

ビジネスの関係でも不満がないので、とやかく言うつもりはないのだが、世の一般男性の意見に興味が湧く。


「あの、男の人はどういうきっかけで結婚したいと思うものなのでしょうか?」

「おぉ。予想外の質問ですね。んー、経済力や信頼度にもよるんでしょうが……しいて言えば、この子になら尻に敷かれるのも悪くねえかもと思ったらですかね」