冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


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「本気で夜会にお嬢さんを連れていくつもりだったとは驚きました。こりゃあ、エルネス大臣も大喜びですね」


書斎を出たあと、ドレイクさんと世間話をしながら廊下を進む。

謎多き情報屋に、見た目や言動から歳上の怖いお兄さんというイメージを抱いていたのだが、向こうは案外フランクに親睦を深めようとしてくれているようだ。


「ウチの主はずっと恋愛や結婚に興味がないんだと思っていましたよ。この前なんて、俺がいない間に五人妃候補が入れ替わっていましたし」

「五人もですか」

「そうそう。切羽詰まったエルネス大臣が俺にお相手探しを頼んできた日もありましたから。情報屋を婚活アドバイザー代わりにするって信じられます?」


なるほど。妃候補を見つけるために一役買った時期があったらしい。身辺調査は十八番なのだろうか?

まさか、私の素性も調べられている?

さりげない会話をするだけで全てを知られる気がしてうまく言葉が出ない。

するとそんな心中を察したのか、翠の瞳を細めた彼は軽く続けた。


「もしかして、俺を警戒してますか?」

「……はい、すみません」

「ははっ、そんなに構えないでください。興味本位に身内を標的にはしませんよ。プライベートでは記念日前に嫁の欲しがっているものを探るくらいしかしない男なのでね」