もしかして、薔薇酒を一気飲みした件を言っているのだろうか?公衆の面前でのキスも知っている?

含みのある言い方に動揺していると、ドレイクさんは陛下に苦笑を浮かべた。


「そうだ陛下。夜会といえば、部屋の扉見てきましたよ。なんですか、あの短剣の刺さった跡は。ヤンチャはこっちの仕事なので危険な橋は渡らないでくださいね」

「はは、すまない。早く修理しないと」 


陛下は虫も殺さないような顔をして、結構攻めるタイプだとだんだんわかってきた。お小言を飛ばされてもニコニコとかわしている。

あまり反省していない様子を察したのか小さくため息をついたドレイクさんは、本題に入るようにクラッチバッグから封筒を出した。テーブルに並べられた書類には数枚の写真もある。


「早速ですが、これが頼まれていた資料です。直接密偵を目撃していないのでなんとも言えませんが、しいて言うなら隣国がクサいですね」


隣国は革命が成る前の王族と癒着関係にあり、我が国の鉱山資源は命じられるがまま横流しにされていたとの噂もある。

独裁王が討たれてその真実は闇に葬られたものの、属国扱いができたアルソートが対等以上の大国になったのが気に入らないのは確かだろう。