声の主はレウル様だ。いたずらっ子のように片目を開けてこちらを見やる。

ま、まさか寝たフリ……


「あれ。もしかして彼女が噂のお嬢さんですか?」


色気のあるハスキーな低音。

さっきまでの威圧感のある態度を消し去った男性は、掴んでいた手を離して緩く口角を上げる。


「見ない顔だったもんで、てっきり陛下を狙う刺客かと。失礼しました」


話し方は大人っぽく落ち着いた雰囲気だが、どことなく食えないオーラがありミステリアスだ。不思議な魅力がある男性を見上げていると、レウル様が私に声をかけた。


「エルネスに言われて来たんだよね?紹介するよ。彼がウチの情報屋。顔を覚えて」


紹介された男性は長い指を胸に当て、軽く頭を下げる。


「初めましてドレイクです。手、痛くないですか?」

「はい、平気です。私はランシュアと申します。よろしくお願いします」

「お噂はかねがね聞いていますよ。夜会での一件もね。ずいぶん陛下と仲がよろしいようで」