なんと。アルソートにも切り札となる存在がいるらしい。内部情報は深く聞けないが、それなりに秘密裏の仕事は多いのだろう。
エルネス大臣は穏やかな表情で背中で腕を組む。
「先ほど、その情報屋がネタを仕入れて戻りましてね。書斎で陛下と会う予定だと言っていましたので、顔合わせをしてはいかがでしょう?」
「いいのですか?仕事中にお邪魔しても」
「はい。陛下からもランシュア様に紹介しておきたいと言伝を頼まれておりますので、遠慮なさらず」
予想外の展開に戸惑いながらも書斎へ向かう。唇を奪われた記憶を無理やり抑え込み緊張の面持ちでノックをするが、中から返事はなかった。まだ予定の時間ではないのだろうか?
こっそりと部屋を覗くと、執務机の椅子に腰掛けるブロンドの髪が視界に映る。
わっ、陛下はいたんだ。
扉に隠れるようにしてしばらく様子をうかがうものの、動く気配がない。不思議に思って歩み寄ると、腕を組んだ姿勢で背もたれに寄りかかり、目を閉じていた。
あのレウル様がうたたねをしている?


