冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


思わず呼吸が止まった瞬間、目の前に大きな影が躍り出た。空中から降ってくる模擬刀を難なく自身の剣で受け止めて弾く。


「おい、しっかり握れ!気ぃ抜くな!」


低く怒号を飛ばした男性に、騎士達はぺこぺこと頭を下げている。突然現れた救世主の背中を見上げていると、ガタイの良いシルエットが素早く振り向いた。


「危なかったな、お嬢さん。間に合ってよかった」


ライオンのたてがみのような茶髪にオレンジの瞳。軍服の腕章は上位の階級を示しており、歳は三十代前半くらいに見える。

あわててお礼を言おうとすると、すっと顔を覗き込まれた。


「お?あんた、もしかして噂の妃候補か?」

「はい。ランシュアと申します」

「やっぱりそうか!辺境の町からえらい美人が来たって聞いていたもんだから、すぐにわかったよ」


それがお世辞なのか本気なのかイマイチ読めない男性は、じーっとこちらを見つめて腕を組む。


「んー、確かに美形同士で並んだらお似合いかもな。まぁ、どんな美人が嫁ぎに来てもなびかなかった陛下の好みはよくわかんねえが……」

「えっと、あなたは?」

「そうだ。自己紹介がまだだった。俺は騎士団長のアスラン。敬語でかしこまる必要はないから気軽に話してくれよ」