冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい



コツコツと広い廊下を進んだ。もう心残りはない。

悲しいも辛いも口にしない。呼び止めてもらえないからといって傷つく資格はないのだ。

そもそも、住んでいる世界も身分も違うのに、愛してくれなくてもいいから結婚してほしいなんて図々しいにもほどがある。

結婚相手を探していると言っても、その気がない本人に代わり、後継ぎを急ぐエルネス大臣が結婚を希望する女性を当てがっているだけ。

かくゆう私もそのうちのひとり。

一週間だけ仮の結婚相手として夢のようなひとときを過ごした。たったそれだけの話だ。釣り合わないのは自分が一番よくわかっているのに、淡い期待を抱くだけ惨めである。


ーーもしも願いが叶うなら、愛を望まないあの人に本当の幸せを知ってほしい。いつか隣で支えてくれる相手ができてほしい。

だって彼は、過去や傷を知っても存在を認めて寄り添ってくれた唯一の人で、誰よりも優しい王様なんだから。


馬車は、私を乗せて動きだす。

車輪の音が聞こえるたびに、心が少しずつ凍っていくのを感じていた。