冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい

**


「ランシュア様。昨夜は申し訳ございませんでした」


翌日。

目を覚まして着替えを終えた頃、タイミングを見計らったかのように部屋を訪れたエルネス大臣に深々と頭を下げられた。その手には分厚い手紙がある。


「これはアスランから預かった反省文です。お納めください」


つらつらと並ぶ達筆。騎士団長はお説教をされた後に徹夜で仕上げたらしい。手紙の量と大臣の態度から察するに、相当しぼられたようだ。


『やってくれたな』

『どうして呼び出されたかわかるだろう?』


現場を見ていないにも関わらず、レウル陛下の冷たい声が脳裏に響く。


「気にしないでください。バックアップの一環だったと理解していますので」


だいぶパンチの効いたアクシデントだったものの、見定め期間の中では一番陛下と話す時間ができた。

しおしおとうなだれた大臣は、やがて気づいたように口を開く。


「ランシュア様。もう荷物をまとめているのですか?」


視線の先にあったのは革のトランクだ。

昨夜、結局モヤモヤと考え込んでしまった私は、城に持ち込んだ物の整理を始めていた。レウル陛下から引き止めるような言葉はなかったし、おそらく見定め期間の成果も見込めない。

潔く屋敷に帰る準備をしていたと知り、悲しげな瞳で見つめられた。