冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


声を止めた陛下。

今のはフォローのつもりだったんだろう。だが、そのセリフはばっちり体を見たという事実を暴露しているも同然だ。

全てを理解して思わず頬が熱くなる私を見て、背中に添えられていた手が離れた。彼はつぅっと眉間に手を当てている。


「悪い。今のは間違えた。いや、間違いではないが」

「すみません。もう大丈夫です。変なことを言って申し訳ありませんでした」


いつも余裕がある陛下とは思えない動揺っぷりに、こちらもつられてしまう。なんとも言えない気まずい雰囲気。部屋の入り口で、ふたりして立ち止まる。


「じゃあ、ゆっくり休んで」

「はい。ありがとうございます」


見上げると、ターコイズブルーの瞳が穏やかに細められた。ふわりと一瞬頭を撫でられる。


「おやすみ」


閉じた扉は初めて部屋に来たときと同じ光景だった。廊下にひとり残されて、ひんやりとした空気を肌に感じる。不思議と心は落ち着いていた。頭をよぎるのはベッドでの会話。


『俺もよく思うから。自分は生まれてきてはいけなかったって』


レウル様と出会ってから、たった六日。私はまだあの人をなにも知らないんだろう。微笑に隠されたものは想像もつかないけれど、本心を話せて寄り添ってくれる人は、この城にひとりでもいるのかな?

もし、誰にも言えず抱え込んでいるのなら力になりたい。信頼をしてもらえなくても、仕事だといって命じてくれれば側にいるのに。

窓から月明かりが差し込む夜。

自室のベッドにもぐってからも、伸ばされた手の熱が忘れられなかった。