冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


指を絡ませる側とは反対の手が首筋に触れ、包み込むようにあごが持ち上げられる。上を向かせられる仕草に息ができなかった。


“誰もが見惚れるほど綺麗な高嶺の花が私だけを見ている”


そう感じた瞬間、知らない感情が溢れた。

ドキドキして逃げ出したくて少し怖くて、それでもやめて欲しくない。いつも除け者にされてきた私が、初めて相手に求められたようで嬉しい。

この気持ちはなに?

すると、ピタリと動きが止まった。


「火照りはひいたみたいだな。そろそろ部屋に戻れるか」

「へ……?」


手を解き、離れていく彼。予想外のセリフについ間抜けな声が出る。

今のは、体の熱を確かめられただけ?


「どうした?」

「あ、いえ。なんでもありません」


顔色ひとつ変えずに立ち上がり、こちらへ手を伸ばすレウル様。キスでもされるのかと勘違いした自分が恥ずかしい。

この人は存在自体がドキドキするほどの色男なんだ。ちょっとした一挙一動が心臓に悪い。

差し出された手に、素直に甘えてベッドから出た。もう立ちくらみや頭痛はない。しっかりと自分の足で歩ける様子を見て彼も安心したようだ。

そのまま背を腕で支えてくれる紳士ぶりに感心していると、ふいに浴場での記憶が蘇る。そういえば、ちゃんと謝っていなかったな。


「あの、醜態を晒してしまい本当にすみませんでした。背中の痕も見苦しかったですよね」


もう開き直るしかないと自嘲ぎみに尋ねる。

しかし、返ってきたのは無意識に漏れたような声。


「いや、見苦しくなんかない。君はとても綺麗だった……」