指を絡ませる側とは反対の手が首筋に触れ、包み込むようにあごが持ち上げられる。上を向かせられる仕草に息ができなかった。
“誰もが見惚れるほど綺麗な高嶺の花が私だけを見ている”
そう感じた瞬間、知らない感情が溢れた。
ドキドキして逃げ出したくて少し怖くて、それでもやめて欲しくない。いつも除け者にされてきた私が、初めて相手に求められたようで嬉しい。
この気持ちはなに?
すると、ピタリと動きが止まった。
「火照りはひいたみたいだな。そろそろ部屋に戻れるか」
「へ……?」
手を解き、離れていく彼。予想外のセリフについ間抜けな声が出る。
今のは、体の熱を確かめられただけ?
「どうした?」
「あ、いえ。なんでもありません」
顔色ひとつ変えずに立ち上がり、こちらへ手を伸ばすレウル様。キスでもされるのかと勘違いした自分が恥ずかしい。
この人は存在自体がドキドキするほどの色男なんだ。ちょっとした一挙一動が心臓に悪い。
差し出された手に、素直に甘えてベッドから出た。もう立ちくらみや頭痛はない。しっかりと自分の足で歩ける様子を見て彼も安心したようだ。
そのまま背を腕で支えてくれる紳士ぶりに感心していると、ふいに浴場での記憶が蘇る。そういえば、ちゃんと謝っていなかったな。
「あの、醜態を晒してしまい本当にすみませんでした。背中の痕も見苦しかったですよね」
もう開き直るしかないと自嘲ぎみに尋ねる。
しかし、返ってきたのは無意識に漏れたような声。
「いや、見苦しくなんかない。君はとても綺麗だった……」


