冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


ためらうような口調だ。

改まってなんだろう?

首を傾げて言葉の続きを待っていると、予想もしないセリフが紡がれた。


「君は、リガオ家の人間にひどい仕打ちを受けているのか?」


まっすぐこちらを見つめる青い瞳。言わんとしていることはすぐにわかった。

背中の火傷だ。

おそらく、虐待を受けていると勘違いしたのだろう。確かに血の繋がった親戚とは思えない扱いをされてきたが、手を上げられたりはしない。


「いえ。この傷は屋敷に引き取られる前についたものなんです。両親と田舎に住んでいたとき、火事に巻き込まれてしまって」

「君の家庭事情は少しだけエルネスから聞いているよ。もしかして、その事故で家族を?」

「はい。両親を亡くしてからは、父の実家に引き取られたんです」

「なるほど。それで、家に迎えてくれた恩返しとして、あんなに必死に俺の妻になろうとしているわけか」

「はい。住む場所を貰えても存在を受け入れてはくれなかったので……いつも思うんです。自分は生まれてこない方がよかったんじゃないかって」


言いかけて、はっ!とした。ぽろりとでた本音に、彼は真剣な表情をしている。

まずい、口を滑らせた。

境遇を誰かに言ったのは初めてだった。自分を卑下するような心の叫びは、決して聞いていて心地よいものではないだろう。

反応をうかがっていると、無意識に漏れたような声が届く。


「わかるよ」

「え?」

「俺もよく思うから。自分は生まれてきてはいけなかったって」