ためらうような口調だ。
改まってなんだろう?
首を傾げて言葉の続きを待っていると、予想もしないセリフが紡がれた。
「君は、リガオ家の人間にひどい仕打ちを受けているのか?」
まっすぐこちらを見つめる青い瞳。言わんとしていることはすぐにわかった。
背中の火傷だ。
おそらく、虐待を受けていると勘違いしたのだろう。確かに血の繋がった親戚とは思えない扱いをされてきたが、手を上げられたりはしない。
「いえ。この傷は屋敷に引き取られる前についたものなんです。両親と田舎に住んでいたとき、火事に巻き込まれてしまって」
「君の家庭事情は少しだけエルネスから聞いているよ。もしかして、その事故で家族を?」
「はい。両親を亡くしてからは、父の実家に引き取られたんです」
「なるほど。それで、家に迎えてくれた恩返しとして、あんなに必死に俺の妻になろうとしているわけか」
「はい。住む場所を貰えても存在を受け入れてはくれなかったので……いつも思うんです。自分は生まれてこない方がよかったんじゃないかって」
言いかけて、はっ!とした。ぽろりとでた本音に、彼は真剣な表情をしている。
まずい、口を滑らせた。
境遇を誰かに言ったのは初めてだった。自分を卑下するような心の叫びは、決して聞いていて心地よいものではないだろう。
反応をうかがっていると、無意識に漏れたような声が届く。
「わかるよ」
「え?」
「俺もよく思うから。自分は生まれてきてはいけなかったって」


