冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい



「すまない。俺が脱衣所にあった服に気づいていればよかった」

「そんな。これは事故のようなものですから……それにご迷惑をかけたのは私の方です。本当に、なんて言ったらいいか」

「いや、君は悪くない。まんまとやられたよ。エルネスとアスランには後できつく言っておく」


きつくって、どのくらいのレベルなんだろう。静かに激怒している様子の彼は、矛先がこちらに向いていないとわかっていても震えるほど怖かった。


「カリーヌ。いろいろと助かった。ありがとう。後は俺がみるから、ふたりにしてくれるか?」

「あっはい。かしこまりました」


え、ふたり?

あわてて引き留めようとするが、カリーヌはグッドラックと言わんばかりに握り拳をみせて去っていく。

待ってよ、置いていかないで。今ふたりきりにされるほど気まずい状況はないの……!

扉が閉まり、しぃんと静まり返る部屋。秒針が動く音だけが鳴っていた。やがて、あたり前のようにベッドに腰掛けられ、心臓が騒ぎだす。


「体は平気か?どこも打ってない?」

「はい。気分もだいぶ楽になりました」

「そう。よかった」


あえて詳細を口にしない気づかいが逆に恥ずかしい。ぎこちなく交わす会話に視線を合わせられずにいると、低く穏やかな声が聞こえる。


「ランシュア」

「はい?」

「ひとつ、君に聞いていいか。嫌な気持ちになったら答えなくてもいいから」