冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい

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ひんやりとした氷の感覚で目を覚ますと、首元に氷嚢が当てられていた。ベッドサイドで様子を見ていたカリーヌに声をかけられる。


「ランシュア様!よかった。体調はどうです?吐き気はありませんか?」

「えぇ、大丈夫よ。ここは?」

「陛下のお部屋です。その……浴場から一番近かったそうで」


言い出しづらそうな様子に、醜態を晒した記憶が脳へ流れ込んだ。

私はのぼせて倒れたらしい。意識を失った後、湯冷ましはカリーヌが面倒をみてくれたようだが、彼女のセリフからここまで運んでくれたのは陛下だと察する。

自分が身にまとっている大きなバスローブはあきらかに男物のサイズで、カリーヌが駆けつける前にその場しのぎで着せてくれたようだった。

まさか、着替えとして脱衣所に持ってきていたものを貸してくれたの?

記憶が飛んでいる間に起こった出来事を想像するだけで頭が痛い。


「気づいたのか?」


ソファに腰掛けていたシルエットが立ち上がった。白いシャツを着て濡れた髪をかきあげる姿に息をのむ。

レウル様の状態から見て、意識を失っていたのは短い間のようだ。カリーヌに氷嚢を預けて体を起こすと、彼は自責の念にかられたような表情でこちらへ歩み寄る。