冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


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「すごい。これがお風呂?」


脱衣所で服を脱いで一歩足を踏み入れると、そこは想像以上に広かった。壁面に施された細やかな装飾も大理石の床もため息のでるような美しさで、うっとりする。

こんな豪華なお風呂に入るのは初めてだわ。独り占めできるなんて贅沢すぎる。

体を洗ってお湯に浸かった。その面積はプール並みであり、つい泳ぎたくなるほどだ。じんわりと熱い源泉の心地よさが体を包む。

レウル様は毎日このお風呂に入っているのか。

体が火照って気が緩んだせいか、そんな考えが頭をよぎった。あの人とちゃんと話せる機会はもう来ないかもしれない。

見定め期間はあっという間だった。おそらく私は、明日追い出される。

ふと彼の部屋での記憶が浮かんだ。ベッドに押し倒されたあのとき何かがあれば、もっと違っていたのかな。

無意識に背中に手が伸びた。

肩から背中にかけて見えるのは火傷の痕である。両親を失った火事で負ったものだ。七年経った今でもくっきりと色素が沈着した傷は、心に刻まれたつらい記憶を嫌でも呼び起こさせる。

きっと、あの夜にこれを見られていたら、さらに嫌われていたかもしれない。こんな醜い体じゃあ、そそられないと言われても否定できないもの。

こんな傷、いっそのこと記憶と共に消してしまいたい。