冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


「あ、そうそう。本来の伝言を忘れるところだった」

「伝言?」

「ついさっき城の配管が水漏れしてな。俺も含め、当直の騎士団員が総出で直してるんだが、結構時間がかかりそうなんだ」

「それは大変だわ。ということは、部屋のシャワーが使えないの?」

「あぁ。だから、今夜は東棟の浴場を使ってほしいってエルネス大臣が言ってたぞ」


一般的にアルソートではシャワーを浴びて済ませるが、王都付近は地熱で温められた源泉が出るらしく、城には大きな浴場が設けられているとエルネス大臣から聞いていた。

また、東棟は王族の暮らすエリアであり、先代の王と王妃は亡くなっているため、今はレウル様だけが使っているらしい。

まさに、王族しか入れない贅沢なお風呂である。

私なんかが使っても良いのだろうか?今夜、主が帰らないのであれば問題はないのかもしれないが。


「わかったわ。知らせてくれてありがとう」

「おぅ。ゆっくり入りな」


ひらりと手を振って去っていくアスラン。

親切な騎士団長を見送って、言われた通り早足で着替えを取りに向かった。


「……さてと。あっちは大臣がうまくやってくれればいいが」


ぽつりと呟かれた言葉は、耳に届かなかったのである。