冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


今日まで臣下たちは気をつかってふたりきりにしてくれたり、髪や衣服を整えてくれたり、ときには部屋にいい感じのアロマをたいてくれた日もあった。

しかし、そのバックアップは警戒心を強めるだけだったらしく、近づく余裕はない。背中を押されてなんとか会話をする私も、変に意識をしてしまってアピールすらできないでいる。

むしろ逆効果……とは申し訳なくて言えないな。

すると、心情を察したアスランは小さく息を吐いて続けた。


「力になれなくて悪いな。せめて期限内に陛下に近づくもうひと押しがあればよかったんだが、今夜、あの方は視察で朝まで帰らないんだ」


やはり、一国の王ともなれば泊まり込みの仕事をするくらい忙しいのだろう。非常事態に備えて視察先は近場だといえど、ゆっくり休養をとる暇もなさそうだ。

自ら視察に出向くのは素晴らしい心意気だと思うが、最後の夜くらいゆっくり話したかったな。

わざと仕事を入れて避けられた、とは考えないでおこう。