身を乗り出すアスラン。訪ねたのはこちらだと伝えたものの、臣下のふたりはお構いなしに嬉々としている。
「今まで頑なに女は部屋に入れなかった陛下が、どんな心境の変化だ?お嬢さん、相当気に入られてるだろ!大臣もそう思いますよね」
「えぇ。私は嬉しゅうございます!カリーヌから“不穏な空気だった”と報告を受けたときは駄目かと思いましたが、杞憂だったようですね」
お付きのメイドからもふたりのやりとりが筒抜けだったらしい。もはや、城中が政略結婚の行先を見守っているのだ。
聞けば、どんな女性もことごとく追い出してきたレウル陛下は相手選びに慎重にならざるを得ない立場ゆえ、恋愛に本気にならないようにしているのではないかと心配していると言う。
幼い頃から側に仕えていたエルネス大臣はその思いが強いらしく、決心したように続けた。
「ランシュア様。私は今まで特定の妃候補に肩入れはいたしませんでした。ですが、陛下のお気持ちが少しでも向いているのであれば、今回は責任を持ってバックアップ致します」
「バックアップ?」
「おっ、いいねぇ。俺も一肌脱ごうじゃねぇか」


