冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい

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「ランシュア様。陛下となにかありましたか」


翌日の朝。

公務に出た王の目を盗むように、お付きのエルネス大臣がこそこそと駆け寄ってきた。その隣には、好奇心に目を輝かせたアスラン騎士団長もいる。


「なにか、とは?」

「いえ、陛下が妃候補の方と一緒に食事をとるのは初めてですから。ぶしつけで申し訳ありませんが、進展があったのかと思いまして」


今朝、食堂に降りると対面の席に陛下が座っていた。昨夜“話す時間を作る”と言ってくれたのは本心だったらしく、他愛のない会話を数回交わしたのだ。

いや、会話と言っても他人行儀ではなく名前で呼んでいいと言われたくらいである。

それに、ベッドでの失態が頭をよぎって落ち着かない私に対し、向こうは何事もなかったかのような顔をしていた。

進展というよりも、“そそられない”とバッサリ切り捨てられたのは、むしろ後退かもしれない。


「ご迷惑をおかけしたので、気をつかってくださっているだけだと思います。同じ食卓を囲んでも、レウル様とはあまり話せませんでしたし」

「その、他にも一点気になりまして。今までは陛下を名前でお呼びになっていなかったはずでは?」

「あ、それは昨日お部屋にうかがった際に少々ありまして、今朝正式に名前で呼ぶのを許されたと言いますか……」

「おぉ!?待て。あの方が自室にお嬢さんを呼んだのか!?」