冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい



ねだるような甘い声。

こちらを気づかってくれているようで、断れば引き下がる意思を感じた。

でも、私も離れたくない。

小さく頷いてシャツに擦り寄ると、精一杯の意思表示が伝わったのか、彼は指を絡ませて手を引いた。

エスコートされるように薔薇園を出る。廊下ですれ違う使用人もなく、気を利かせられているのかと思うと恥ずかしい。

王族の居住エリアである東棟は静まり返っていて、一定の距離を空けて灯るランプの光が心もとなく感じる。


やがて、陛下の部屋の前に着いた。導かれるまま部屋に入り、扉が閉まる。

“明かりをつける気はない”

そう察して、心臓が騒ぎだす。

手が解け、振り返った青い瞳と目が合った。さりげなく私の髪を留めていたバレッタを外したレウル様は、それを手渡してささやく。


「上着だけ脱いで来るから、ベッドで待っていてくれ」


直球な言葉に一瞬声が出せなかった。

はい、とぎこちなく答えると、背を向けて歩きだす彼は、ジャケットの袖から腕を抜いて部屋の奥へと消えていく。

緊張で頭の中が大混乱だ。


丁寧に上着を掛けに行くなんて、こんなときも落ち着いているんだな。

いつも余裕があって動揺したところなんて滅多に見せないけど、実は同じくらい緊張しているのだろうか?