冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


あぁ、言った。

顔がまっすぐ見れず、ついうつむく。

その瞬間、長い指が頬に添えられた。

ふたりを照らす月明かりが、目の前に落ちた影で遮られる。


「ん……っ」


唇に触れた柔らかい感触に、つい声が漏れた。

驚いて目を見開くと、長いまつ毛が至近距離に映る。

静かに口づけをした彼は、そっと離れてこちらを見た。輪郭を愛おしそうに撫でる仕草が繊細で優しい。


「今のは?」

「俺の返事」


意味に気付いて全身の体温が急上昇した瞬間、彼は、かすかに頬を染めて甘くささやいた。


「好きだ、ランシュア。俺にとって、君以上にかけがえのない人はいない」


これは、夢?

世界で一番愛している人が、私を好きだと言ってくれる。そんな幸せをもらってもいいの?

すると、上着のポケットからあるものを差し出された。手の中にあったのは小さな箱。初めて見るベロア素材のケースに目を見開く。


「ずっと渡そうと思っていたんだ。なかなか良いタイミングがなくて、すごく待たせてしまったけど」