向こうは黙って言葉の続きを待ってくれている。
焦る必要はない。震えそうになる声を必死で絞りだす。
「私はずっと、ビジネスとしてお役に立とうと考えてきました。家の負債を消すため、駆け落ちした両親の罪償いのために、妃になろうとしてきたのです」
でも、と続ける。
「レウル様と一緒に過ごすうちに、心からあなたを支えたいと思うようになりました。青い薔薇の噂だけじゃない本当の陛下を知って、側にいたいと思ったのです。だから、その」
言葉がうまくまとまらない。
伝えたい想いは溢れるほどあるのに、好きなところを挙げたらキリがなくなる。
誠実で優しく芯の通った理想の王。寛容なだけではなく、ときには容赦ない一面もあるけれど、それは全て大切なものを傷つけないために必要な強さだ。
つらいときに側にいて、欲しい言葉をくれた。自分を大切にする意味を教えてくれた。
誰かに愛されることから一番遠い存在だったはずの私に、たくさんの温もりをくれた。
エルネス大臣やアスラン、ドレイクさん、多くの素敵な人たちとの繋がりを得られたのも、レウル様がいてくれたからだ。
まどろっこしい言葉はいらない。
一番伝えたい気持ちだけ声に乗せた。
「レウル様が好きです。この世界の誰よりも、あなたをお慕いしています」


