和やかな空気に沈黙が流れる。会話が止まっても嫌じゃない。
心地よい風が頬を撫で、ずっと座っていたくなる。
いや、だめよランシュア。穏やかな雰囲気に癒されている場合じゃない。
今夜は、自分の気持ちをはっきり伝えるためにここへ呼んだのだから。
装飾品で着飾って、メイドたちに背中を押してもらってきた。
今朝からソワソワしていたせいで、アスランもドレイクさんもなんとなく察しているようだったし、エルネス大臣からも、どこから取り寄せたのかわからない恋愛成就のパワーストーンを手渡された。
私には応援してくれる味方がいる。しっかりしなきゃ。
ただでさえ口下手なのに、緊張でガチガチになっていると、こちらを見つめる視線に気がついた。
楽しそうに微笑んでいる。
「なんでしょうか?」
「いや。一生懸命考え事をしているなと思って」
バレている。
必死さが顔から伝わったのだろうか?
ここまで来たら、ずっと焦らしているわけにもいかない。
覚悟を決めて、隣へ向き直った。
「実は、レウル様に大切なお話があるんです。今日はそのためにお呼びしました」


