冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


和やかな空気に沈黙が流れる。会話が止まっても嫌じゃない。

心地よい風が頬を撫で、ずっと座っていたくなる。


いや、だめよランシュア。穏やかな雰囲気に癒されている場合じゃない。

今夜は、自分の気持ちをはっきり伝えるためにここへ呼んだのだから。

装飾品で着飾って、メイドたちに背中を押してもらってきた。

今朝からソワソワしていたせいで、アスランもドレイクさんもなんとなく察しているようだったし、エルネス大臣からも、どこから取り寄せたのかわからない恋愛成就のパワーストーンを手渡された。

私には応援してくれる味方がいる。しっかりしなきゃ。


ただでさえ口下手なのに、緊張でガチガチになっていると、こちらを見つめる視線に気がついた。

楽しそうに微笑んでいる。


「なんでしょうか?」

「いや。一生懸命考え事をしているなと思って」


バレている。

必死さが顔から伝わったのだろうか?

ここまで来たら、ずっと焦らしているわけにもいかない。

覚悟を決めて、隣へ向き直った。


「実は、レウル様に大切なお話があるんです。今日はそのためにお呼びしました」